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2010年3月12日金曜日

The Hurt Locker

Avatarにて凄く気になっていた作品

「The Hurt Locker」



みました〜〜

『ハート・ロッカー』が作品賞と監督賞を含む6冠を受賞した作品だけあって見入ってしまいました!!







「感想」

見ていて呼吸を忘れるような
緊迫の時間が続く映画だった。

なるべく要所をボカして書くが
それでも幾つかのエピソードを書くので
まっさらで見たい人はご注意を!!


まず本作はスーパー16撮影から35ミリにコンバートされている。
なのでザラっとした画面と、粗い階調が続く。
ただ、最近の「ビデオカメラ」を使った感じとは違い
いわゆる「デジタルノイズ」は無く、ブロックパターンが
チラチラ動くような画面は「メカ主観」以外は無い。
なので、「リダクテッド」みたいな
ドキュメンタリーぽいタッチとも違いうが
あれが結局ウソドキュメントの域を超えて無かったのと比べ
れっきとした劇映画ならではのドラマもありながら
完成されすぎた画面(BHDなど)より、観客の距離感は近くなる
インディーズ感も保っている。


結局は「戦争は中毒」であり、政治や本来の大義
目的や意思などはいつの間にかどうでも良くなって
結局は「人を殺す。それもより多く」だけ残り
単純に物量で敵わない相手には、なんでもありの攻撃に。
それが「仕掛け爆弾」でもあり「戦争請け負い会社」で
「正規の兵士」すら、処理をするという魔力に取り憑かれる。
一体何のために戦っているのだろう…。という空しさを超えた
「中毒=楽しい事」に近い恐ろしさが続く。


かと言って、淡々とした場面ばかりではなく
スナイパー物のようなサスペンスが中盤用意される。
数キロ離れた所か狙撃され、互いにこう着状態の中
何時間もスコープをのぞきながら、顔や目にハエが止まっても
凝視し続け「根負け」するのを待っているシーンは
出色の静かな緊張感だ。その中にパックジュースのストローを
狙撃主の為に刺して飲ませてあげる場面や
予備カートリッジが、血と砂のために詰まり
大口径の玉1つ1つをツバや水で洗って渡すという
監督の細かい演出がとても生きている。


ビグロー監督の「ハートブルー」も、中毒になった者同士の
友情が芽生えたりするのだが、本作も似たような空気になり
男の監督なら逆に気恥ずかしくなってしまいそうだが
クドい位真っ正面から描いている。これは「味」でもあるが
キャメロンの「強い女性好き」の裏返しのようで
なんとも複雑な元夫婦とも邪推してしまう。



中盤、子供に対してあり得ないような残酷な場面がある。
既に終わったあとではあるのだが、いくら敵を倒すためとは言え
こんな酷い方法があるのか…という位だ。
見ていて吐き気と頭の中をかきむしられるような場面を
ビグローは真っ正面から描く。女性目線の
どこか生々しく内蔵的な描写で。正直目を背けたくなる。
その後の予想を外した爆発で、兵士の神経はズタズタになる。
主役の兵士は、既に800本以上の爆破処理してきた男なのに
さすがにこの事件で、ある行動に出るのだが
ここは飛躍が「映画的」であり、そう単純には…とも思うが
劇映画としての限界と妥協の部分でもあるのだろう。
(これが無いと逆に救われない)




主人公が帰国し、一応待っててくれた妻と子供。
そして「シリアルをお願い」といわれ、大きなマーケットの
あふれんばかりのシリアルの棚から1つをカートに入れる。
帰国する前に見ていた光景は、死との隣り合わせの
生を感じられていたが、ここには「食べ物もどき」が並ぶ
退屈な場所でもあるのだと。
あの「死と隣り合わせ」で飲んだ、パックジュースの
美味しさとは違う、何もない消費物でしかない。


彼は子供にビックリ箱のオモチャであやす。
やや説明過多でもあるが、子供のクリクリした輝く目と
まったく輝いてない男の目。
そして彼はまた戦場に帰る。死の中での解決でしか
生を感じられない男の足は軽やかで。
もし、この戦争が「幸福」にも終わった時
彼に幸せはおとずれるのであろうか…。


そんな恐ろしさを持った幕引きで、観客はやっと緊張感から解放される。
一部の展開に「?」も感じたが、傑作である。

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